「シニアケアを変えるコンパニオンシップ」 (3)
チームで利用者の思いを実現
利用者に向き合い、「コンパニオンシップ」を直接的に実現させるのはケアスタッフだ。 しかしどんなに優秀なケアスタッフであっても、個人の力量のみでは限界がある。 実はケアスタッフのサービスの陰には、他の何人もの別のスタッフのフォローが欠かせないという。 「コンパニオンシップ」は個人の力ではなく、チームの力で生み出される。
ケアスタッフの伊藤孝夫さんは年に数回、地元関西の施設に入居する清瀬博さん(仮名)の元を訪れる。 清瀬さんは大の鉄道マニア。 朝、足が不自由な清瀬さんを介護タクシーに乗せ最寄りの駅まで向かい、車いすの清瀬さんと一緒に電車に乗り込む。
一番のお気に入りが先頭車両の最前列。 展望が開け見晴らしが抜群だからだ。 もちろん伊藤さんはそのことを十分に承知しており、清瀬さんに声をかけながら移動。 「最も気をつけるのが安全です。清瀬さんはもちろん、他の乗客の方に迷惑をかけないよう絶えず心がけています。」(伊藤さん)
昼食は予め予約しておいた店で、清瀬さんの好みの食事の介助をしながら、駅名や車輌の話にじっくり耳を傾ける。 土産購入の要望があれば百貨店まで車いすを押し、鉄道グッズを求められれば駅で入手する。 常に清瀬さんの話をじっくり聴き、満足してもらうための行動を欠かさない。 夕方施設に清瀬さんを送り、「今日は一日疲れましたね。ゆっくりお休みください」と伊藤さんは声をかけ、帰途に着く。
この一日のコンパニオンシップを実現させるために、他のスタッフが入念に準備を整える。 「お客様が時刻表を見て決められた旅程に従って事前に鉄道会社に連絡したり、移動ルートに従い車いすが通れるか、トイレに段差がないかまでチェックします」(お客さま係の徳永高子さん)。 こうした目に見えない何人ものスタッフの努力がコンパニオンシップの実現に欠かせないのだ。
関西在住の人見三千代さんは、サービスを4年間利用している。 「今年1月に亡くなった認知症の父の世話を3年間、自宅から老人ホームなどの施設へ場所が変わってもずっとお願いしました」。
ケアスタッフは伊藤英子さんと大西克代さん。 二人が語る。 「非常におとなしい方でした。ご自宅では食事や掃除とお話相手。施設で過ごされた時にはぬり絵や積み木、紙飛行機を飛ばして楽しまれたこともあります。寂しがられないよう、興味がもたれることをいろいろと考えました」。
人見さんはケアスタッフのことをこう話す。 「父はお二人と親密な人間関係ができていました。だから施設に入所したときなどでも続けてお願いしたところ、私と一緒になり交代で父の見守りをしてくれました。お二人は熱心にお世話をしてくれました。すでに家族です」。
その後も人見さんは長男嫁の出産時の食事づくりや自宅の掃除などを、引き続き伊藤さんや大西さんに依頼している。
”家族のような”ではなく、もはや家族と言わしめる関係を構築した二人だが、それを支えたのが当初担当したマネジャーの辻晴男さんだ。
「夜8時でも介護などの相談にかけつけてくれます。施設選びでもたびたび適切な助言をくれました。料金を支払っているから当然ではなく、それを超える気配りなのです」(人見さん)。 利用者が求める情報提供もコンパニオンシップには求められるといえよう。
直接的なサービスのみならず、それを支える間接的なサービスをいかにして充実させるか。 チーム力なくしてコンパニオンシップの実現は語れないと言えよう。
※シルバー産業新聞(株式会社シルバー産業新聞社)編集部の許可を得て、記事を掲載しています。
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